防具の役割について

このページでは、
防具について当たり前すぎてあまり語られないことを少しお話したいと思います。

防具について当たり前のこと

防具について当たり前すぎてあまり語られないことを少しお話したいと思います。
剣道をする人達で防具の話題になった時、どんな話しをしますか?
多分、「この防具はいくらした」「いくらまけてもらった」「どこで買った」「誰が作った」「1分の手刺しだ」「この刺しは丁寧、雑」「布団が硬い軟い」「型のつけ方うんちく」「この蜀江はどうだこうだ」「胴の色は云々」「サメ胴の目の位置は」などなど
もうお気付きだと思いますが、ほとんどがいわゆる見た目、外観に関する事だと思います。

では、なぜ防具が防具と言われる所以である機能性についてはあまり語られないのでしょうか?
(ここでは、機能性というのは主に①防御機能②攻撃機能③使い勝手④耐久性の事をいいます。)

その理由としてのひとつは機能性については人それぞれによって感じ方が違うために説明しにくいということがあげられます。例えば、稽古で面を打たれて衝撃 を感じる度合いや構えたときの胴胸が脇から胸にかけて与える感じだとか、小手の作り方、サイズのズレによる手首の動きや手の内の加減だとかなかなか表現し づらいですよね。

ふたつ目の理由は、高くてそう何回も買い換えられないので、物の違いが体験できない事でしょう。面や小手は特にいくら仲の良い友人の物であっても、人のは使いたくないですしね。
ほかのスポーツはどうでしょう。例えば、サッカーシューズなら、1万円も出せば立派なものが買えますから自分の求めるものを割と簡単に手に入れられます。 野球のグラブ・バットぐらいなら手軽に友人のを試すことができるでしょう。ゴルフクラブなんてのはショップに試打クラブがたくさん用意してあって選び放 題、逆に迷ってしまうぐらいです。試打竹刀なんてあったらいいと思いますが、竹刀には規格がないし個体差が激しいので難しいでしょう。でも、今の時代、重 量バランスの数値による規格化ぐらいは絶対に必要だと思います。

機能と美の両立

剣道は他のスポーツと違い刀という武器を想定した竹刀を使って技を競うものですから生身では危険過ぎます。防具なしはもちろんの事、動きやすさを重視したポロシャツやTシャツでは身体が傷だらけになってしまう事でしょう。

いまある剣道防具で機能だけを追求して選択すれば、2.0分手刺しの織刺がベストではないかと思います。
その理由は

  • 打たれて痛くない
  • 動きを妨げない
  • 長時間着けても痛くない
  • 汗の吸収と発散に優れている
  • 乾きが早い
  • 刺し糸が深く沈んでいるので糸切れしにくい

などが挙げられます。

まず、手刺しであるので布団の詰めものをたくさん入れられます。4.5ミリの間隔で刺しているので凹凸がはっきりと出ますので、凸部の厚みが衝撃吸収を し、凹部に糸が沈み込んで糸切れを防止します。とてもソフトで初めから身体になじみます。手足の動きを妨げることはありません。中の真綿が大量の汗を吸っ てくれます。いいことづくめですね。でも残念、見た目が野暮ったいんです。

一方、美だけを追求していくと1.0分手刺しの薄く、鹿革を豪華にあしらったものに行き着くでしょう。布団が薄いので見た目がシャープになります。胸やア ゴの飾りと鹿革によって重厚感もでます。いかにも強そうです。でも...「耳が痛い」「硬くて動きにくい」「長時間辛い」お世辞にも使いやすいとは言えな いし、稽古では使いたくないので、数セット所有している人はここ一番以外は床の間に飾ってあるかもしれません。

ということで機能と美を両立させる手刺し防具は1.2分か1.5分ぐらいがベターということになるのでしょう。もっと手刺し防具の価格を手頃なものにし て、稽古で2.0分、試合・審査で良く慣らした1.0分と言う具合に2台を使い分けできるようにするのが私ども防具販売者の使命ではないかと思うのです。

剣道防具は長い歴史の中で使い手と作り手の試行錯誤によって今の形に落ち着いています。しかし、ここで止まってはいけません。競技であるからには機能性は 追い続けなければいけないのです。ただし、剣道の大きな魅力のひとつでもある他のスポーツには見られない日本独自の美観は決して失いたくないものです。

柔道はオリンピック種目になったことにより急激な国際化が進み、カラー柔道着などが登場して話題になり賛否両論ありましたが、今では違和感なく定着をして いるようです。剣道も年々国際化されていますが、カラー剣道着・袴、カラー甲手、カラー面金という時代が来るのでしょうか?