手刺し防具が高い理由

このページでは、
「なぜ、手刺し防具は高いんだろう?」という素朴な疑問にお答えいたします。

理由その1:「手刺し防具の製造工程は、ほとんどが手作業」

ひとつの防具を作るのに人と時間がたくさんかかります。パーツの製作、組み立て、仕上げと多くの工程に渡って、手作業が必要とされるのです。

では、面の作り方を例にして簡単に説明してみましょう。
面は大きく分けて、面金、布団、アゴの3つパーツからできています。

面金は3種類①台輪②縦金③横金 面金は3種類①台輪②縦金③横金を組み合わせて作られます。③横金にいたっては顔の曲面に合わせるために14本すべてサイズが違います。この3つを接合して頑丈な面金ができるのです。
ちなみに、材質は昔は鉄でしたが、今の手刺し防具にはほとんどチタンが使われています。理由は軽くて強度があるからです。

面布団を刺す前の状態 布団は材料を何層にも重ねて刺していきます。左写真は面布団を刺す前の状態です。これだけの厚みのものをわずか3mm~5mmの刺し幅で表と裏の生地がきっちりと等間隔に整列させ、薄い状態に仕上げるわけですから大変な技術と労力を必要とします。

詰めものをたくさんすれば衝撃吸収力が高くなって良いのですが、薄く美しく仕上げるには技術を必要とし効率が悪いので、コストが高くなってしまいます。
したがって、安物の手刺し防具は布団の中身が見えないことをいいことに、薄く仕上げる為に最初から中身を減らしたりして、この一番重要な部分が手抜きになっています。
布団の作りは手刺し防具の品質を見分ける絶好のポイントになりますから、ぜひチェックしてみてくださいね。

面アゴ碁盤刺し飾り 面アゴ蜀江(しょくこう)飾り アゴは表(突き垂れ)と裏(用心垂れ)2つあります。のど元は人間の急所でありますので二重にして守られています。表は頑丈さが命です。たまに表アゴがぐらぐら、ペラペラしたものを見かけますがこれではいけません。布団よりもしっかりとした詰めものをして表は全て皮張りです。裏アゴも動きによって擦り切れやすいため皮で補強しているものが良いでしょう。
写真左は碁盤刺し飾り、右は蜀江(しょくこう)飾りといいます。装飾に凝ったものが多く、好みが分かれるところでしょう。その下には段飾り、5段飾りが一般的です。アゴは狭いスペースながらとっても手間がかかっています。ちなみにこれらの装飾は見栄えだけではなく、竹刀が滑るのを防ぐ役割もしています。

簡単に各パーツの作り方を説明しましたが、次はこれらのパーツを組立てていかなければなりません。
このように面ひとつを作るにしても、本当に手間ひまがかかるんです。

手刺し防具もトヨタの車や電気製品のようにオートメーションで大量生産することができたらもっと安く作れていいだろうなあと思います。
しかし、手刺し防具のあのなんともいえない風合いはやっぱり手づくりでないと出せないのかもしれません。

理由その2:「日本は人件費が世界一高い」

人件費べらぼうに高い日本で人の手で物を作ったら値段が高くなるのはあったり前です。
だから、手作り品の原価を下げるためには安い原料を使うか、人件費の安いところで作るしか方法はありません。
とはいっても、MADE IN JAPAN の高レベルで作らなきゃ意味が無いのでそう簡単にはいかないのです。
剣道は日本特有の文化であるのと、手刺し防具は剣道の長い歴史の中で生まれた芸術的な要素が強いために、その出来映えに特に差がでてしまうようです。

理由その3:「日本の職人さんが少なくなった」

それに拍車をかけるのが、日本の職人さん不足です。
先にも書いたように、手刺しの防具は本当に手間ひまがかかる重労働と言えます。
職人さんの高齢化、安い輸入品の台頭、職業の多様化等の理由で職人さんの数が激減しています。
昔は防具店のおやじさん=職人さんでしたが、今の防具店では自前で手刺し防具を作っている所のほうが珍しいくらいなのです。

そうすると当然、日本の職人さんが作る手刺し防具というのは品質の高いものであることに加えて、その希少性から、目ん玉が飛び出るような恐ろしく高い値段の芸術品になってしまうのです。

理由その4:「防具業界の怠慢~競争のない業界」

不況日本ではあらゆる業種の中で競争に勝ち残るために各企業がしのぎを削っています。
防具業界はどうでしょうか?
防具は高いのが当たり前ということで済ませていないでしょうか?

そのしわ寄せはどこに行くかというと消費者です。
企業努力が足らないために消費者に負担をかけているのではないかと思うのです。
安いだけが能ではありませんが、もっと消費者の立場に立った商品作り、企業経営が必要ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?